こんにちは、すず子です。
「保育園に行き渋る」
「玩具の貸し借りができない」
「友だちと一緒に遊べない」
子どもがみんなと同じように「できない」ことがあると、不安に感じますよね。
大人もつい「できる」ことを求めてしまう気持ちがあると思います。
「できる」ことが増えていくのは、子どもにとっても親にとっても嬉しいことです。成長の証に間違いありません。
でも「できない」ことも、子どもの成長にとって必要なもの。
今日は、『過程に目を向けること』の大切さについて、私の考えをお話ししたいと思います。
これは私が保育士として大切にしてきた3つの「軸」のひとつ。そして、親としても大切にしていきたいと考えていることです。
1つめの『対等な関係であること』についてはコチラ。よかったら、あわせてご覧くださいね。
「過程に目を向ける」とは?
この視点と出会ったのは、私が大学生のとき。見学先の幼稚園で、園長先生がこうおっしゃいました。
と。学生の私にとっては新鮮な視点でした。その考えが私の保育の軸になっています。
“鉄棒ができる”とか、“文字が読める”とか、
そういう“できる”ことは大人にとっても分かりやすく、つい注目しがちです。
でも、その“できる”までに
- どんな葛藤があった?
- どんな工夫をしていた?
- どんな気持ちを抱えながら向き合っていた?
- どんな努力があった?
そこに目を向けることで、見えてくる子どもの育ちがあります。
「できない」時期にこそ、子どもの学びが溢れているのです。
「過程」が大切と考える理由を、2つのエピソードとともにより詳しくお伝えします。
ep1:不安が強くて、新しい環境に慣れない
たとえば、幼稚園で出会った3歳の女の子のお話。
3歳児クラスから入園してきたその子は、はじめの頃、とても不安が強く、指を口にくわえたまま、ロッカーの前から動けずにいました。
しかし、一見ロッカーの前でじっとしているように見えて、その子はまわりのことをすごく見ていることに気がつきました。
保育者の動きや、友だちの遊んでいる様子をじっくり観察しているのです。
興味がありそうなことに、こちらからも誘ってみます。
最初は、首を横に振るだけでしたが、少しずつ手を伸ばし、取り組む姿も増えていきました。それでも保育者が近くにいられないと、またロッカーの前に戻ってペタリ。
家庭では、お喋りで、自分のことは何でもできるけど、園では保育士がそばにいないと動けない状況が2〜3ヶ月続きました。それでも少しずつ、確実に、興味あることを見つけ取り組んだり、友だちと笑い合ったりする姿が増えていきました。
そして半年後には、すっかり、保育士がそばにいなくとも、イキイキと遊びまわる姿へと変化していきました。
まわりと比べればゆっくりだけど、その子にとってこの半年は大切で必要な時間でした。
“成果”を求めると、とにかく何かをやらせようとしてしまったり、何かできることを「よし」としてしまうことがあると思います。
でも、どんなに小さなことでも、
「楽しかったね。」「一緒にできて嬉しかったよ。」と声をかける。
「今日はこんな遊びがあるけど、どうする?」と選択肢を示し、その子が動きだすのを待つ。
そんな関わりが、安心感をもって自分らしく振る舞うことができる姿につながっていきました。
「過程」を大切にすることで、その子にとって「今」必要な関わりが見えてきます。
ep2:玩具の貸し借りができない
もうひとつ、よくこんな場面があります。
子どものケンカ。玩具の取り合いです。
「貸せる・貸せない」「取る・待てる」
そういう“できる・できない”に注目すると、できない子が“悪く”見えてしまうかもしれません。
貸してあげられるように。「貸して」と言えるように。大人は関わろうとします。
でもそれ以上に大切なことがあります。
過程に目を向けると、
- 貸したくないのは「もっと使いたい」という気持ちがあるから。
- 取ってしまうのは「うまく伝えられなかった」だけ。伝える方法がまだわからないから。
そこにあるのは、子どものそれぞれの想いであり、うまくいかない葛藤です。
大事なことは
- 自分の気持ちを言葉にすること。
- それを相手に伝えること。
- そして相手の気持ちを知ること。
「できない」時に、「どうしたらできるかな?」を一緒に考えていく過程が、その子の生きる力になります。
「できない=ダメ」じゃない。
そこには、その子にしかできない“今だけの学び”があります。
“失敗できる”は強い
「できない」は苦しいし、「失敗したくない」と思うのは当然です。私自身は特にそうです。
だからこそ、子ども時代に「失敗」をたくさん経験することは大事なことのように思います。
「できない姿も見せられる」って強い。
失敗しても、「じゃあどうする?」と自分で考えたり、もう一度試したりできること。それって、“生きる力”になると思います。
小さなケガで、大きなケガを防ぐように。
小さな失敗で、大きな失敗を防ぐように。
子どもたちには、安心して「失敗」できる関係性、環境を保証してあげたいと思うのです。
子どもが伸びる原動力は?
もちろん、成果をないがしろにするわけではありません。
子どもだって「できた!」は嬉しいし、親も成長を感じられて嬉しい。一緒にその喜びを味わうことも、大切にしたい。
「できた!」の成功体験は、自信にもなるし、次のチャレンジへの原動力になります。
でも、子ども以上に大人が喜びすぎたり、褒めすぎたりすることには注意が必要です。
行動の原動力が「親を喜ばせたい」「期待に応えたい」になってしまうことがあります。
それはちょっともったいないと思うのです。
「自分がやりたいからやる」
「楽しいからやる」
「面白いからやる」
そんなふうに、内側から湧き上がる意欲こそが、子どもが“自分らしく”生きていく力になると信じています。
おわりに
親として、まわりと比べて不安になることもある。
できないと心配になるし、できると安心する。
それはとても自然な感情だと思います。
そんな中で、
「できる」「できない」よりも
「この子はどんなふうに育とうとしてるんだろう」
と、その“過程”に目を向けられると、ちょっとワクワクしてきませんか?
「できること」も一緒に喜び
「できないこと」も一緒に楽しむ
私は、そうやって子どもの成長していく姿を見守れたらいいなと思っています。
もちろん!実際は、そう思える時ばかりじゃないですけどね(笑)
次回は
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
次回は、
私が保育士として大切にしてきた3つの「軸」
3つめ『子どもが選ぶこと』について綴ろうと思っています。
そちらもよかったらご覧ください。
それでは、また!
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